大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 平成9年(あ)980号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人赤坂軍治の上告趣意は、憲法三一条違反をいうが、実質は単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

なお、所論にかんがみ、職権により判断すると、原判決の認定によれば、被告人は、所属する暴力団の若頭からけん銃等の入手方を依頼されたため、知り合いの暴力団組員にその当てについて打診したところ、譲渡できる旨の連絡を受けたことから、その旨若頭に報告し、けん銃等を持参した右組員を若頭に引き合わせて両名の交渉する現場に立ち合い、若頭にけん銃等を入手させたというのである。銃砲刀剣類所持等取締法三一条の一五にいうけん銃の譲渡しと譲受けの周旋とは、譲渡人と譲受人との間で譲渡し、譲受けが行われるよう仲介することをいい、本件のように譲渡人又は譲受人の一方からの依頼を受けて他方に働きかけ、その者が応じた場合も仲介したということができるから、被告人の行為は周旋に該当するものと解される。しかし、その周旋行為によってけん銃の譲渡が実現したときは、同条の周旋罪より刑の重い同法三一条の四第一項が規定するけん銃の譲渡し又は譲受けの罪の幇助罪が成立するものと解されるから、被告人につきけん銃の譲受けの罪の幇助罪の成立を認めた第一審判決を是認した原判決は、結論において正当である。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 園部逸夫 裁判官 千種秀夫 裁判官 尾崎行信 裁判官 元原利文 裁判官 金谷利廣)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例